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2017.04.17

『コンドームの別に正しくない使い方』

昨今、BL小説にもセーフセックスを!性病予防の正しい知識を持とう!という向きがある。
賛同するも、知ったこっちゃあるか俺は二次元BLファンタジーで無責任中出しするぞ!と思うも自由ですが、セーフセックスと言えばコンドームですよね。


コンドーム。
それとの出会いは忘れもしない中学1年生の夏。
小中学生の間ではしばしば科学的根拠ゼロの突拍子もないおまじないが流行るものである。
「コンドームをお財布に入れてるとお金が貯まる」
これもそのひとつだろう。
コンドームは瞬く間に学校中に広まった。
私も友だちが先輩の先輩の友だちのお兄ちゃんからもらったのをもらったことがある。
えらく長い旅をしてきたコンドームだ。
自分で買ってる子も中にはいたのだろうか。
でも先日の『限界腐女子、大人のオモチャを買い込む』でも書いた通り自分からこの手のものを買ったと宣言する人はあんまりいない。
女子中学生ならなおさらだろう。
それらが流通するときはたいてい「私ももらったんだけど、分けてあげる」という文句が使われた。
ただ、これは避妊具だという認識はみんなあったが、それよりもまず「金運グッズ」だった。
なので、それを財布に入れることにみんな特別深い意味を感じていなかったと思う。
今になって勘ぐってみれば、
女子学生が財布にコンドームを入れておく→それを使って援助交際する→お金が手に入る
という風が吹けば桶屋が儲かるショートバージョンなのでは……と思うのだが。
ただ、この噂は男子にも広まっていたので、男子生徒も財布にコンドームを入れてる子が多かった。
この間攻めが助けに来ないタイプのモブレイプを読みながら「この受けも金運アップのおまじないでコンドーム持ってりゃ中出しは免れたかもしれんな……」と懐かしく思い出した。
ちなみにこれはこの後攻めによる「俺が触られたとこ全部きれいにしてやる……」というお清めセックスが行われてしまい泡吹いて倒れたのだが、攻めも無責任中出しマンだった。
何がお清めだよ。お前の精液は聖水か?

コンドームとのかかわりは次第に深くなりはじめる。
おまじないグッズではなく、遊び道具としての活用の始まりだ。
中学二年生になり「コンドームのパッケージを開ける」ということを思いついた我々。
火を初めて使えるようになった人類みたいですね。
コンドームをちんちんカバーとして以外の用途で使ったことのある人はめちゃくちゃ多いと思うので言うまでもないが、あいつの伸縮性たるや並大抵のものではないのだ!
ぷうぷう膨らませればそこらの風船なんか目じゃないほど膨らむ。
水風船にすれば信じられないほどの水が入る。
これ、ちんちんに被せて精液溜めるより災害時に水を運ぶのに使うほうがよっぽど……。
と思ったらすでに活用されている例も多くあるようですね。
中でもこちらの記事
「コンドームを持つ女性はかっこいい」という文化を作りたい! “女性のための防災キット“が企画された理由 http://news.livedoor.com/article/detail/9217461/
で取り上げられているサバイバルセットには、コンドームも飲料水や備蓄食料と一緒に入っています。
一部を記事より引用します。
『コンドームは災害時にも活躍してくれます。日本製のコンドームは非常に性能がよく、止血や怪我をしたとき雑菌が入らないよう手袋として使えます。さらに、水も最大4リットル入れることができます。運ぶことを考えると1~2リットル程度(布でくるんで持つと割れにくい)が適当ですが、転がっているペットボトルに水を入れるよりも清潔です。』
防犯ないしジェンダー的な観点からも女性がコンドームを持つことは推奨されますが、こういう使い方もあるんですね。
ちょっと真面目なほうに話が逸れました。
……と、大人になったのでこういう風にも考えられるのだが、中学生女子、しかも女子力キラキラではなく完全にオワリの臭気をまとった腐女子にそんな思考があろうか?
いや、ない。
私の脳は小学生の男子とタメ張るレベルなのだ。
酸欠になるほど膨らませることができる風船! 4リットル入る水風船!
テンションが上がらないわけがない!
類は友を呼ぶ現象で集まった大はしゃぎ仲間たちとコンドーム風船バレーなどに勤しんだものだ。
公園でコンドームをポーン、ポーンとトスする女子中学生。
ちょっと前衛芸術系の監督が撮ったショートムービーの一部っぽいエモさないですか?
かくしてコンドーム遊びが定番となった我々イケてない女子中学生は公園で薄ピンクのそれを酸欠寸前になりながら交代で膨らませては大はしゃぎした。
この公園、子どもが遊んでるといきなりキレだす爺さんが隣に住んでいて小学生が来ないので好都合だったな……。小学生がいたらさすがに躊躇したであろう。
ちなみにコンドームの入手先は100円均一ショップだ。
最近見かけないけど、昔はサンリオキャラとコラボしたのが売ってたのだ。
宙を舞うコンドーム。風にさらわれるコンドーム。その下でスカートを翻す女子中学生。
しかし女子中学生は飽きっぽいことでも有名な生き物なので、コンドームバレーにもすぐ飽きてしまった。
空気の抜けてぺちゃんこぺらぺらになったコンドームをなんとなく蛇口に装着してみる。
ゴクゴクと水を飲んで膨らんでいくコンドーム。
その動きはなんとなくコミカルで小動物的であった。
「かわいい……」
「こいつ、かわいいよ」
女子中学生、それは箸が転がっても可笑しい年頃。そしてアンガールズを見てもキモカワいい年頃。
コンドームだってかわいいのだ。

「ねぇ、このコンドーム飼おうよ」

知能低下した女子の発想はいつもこれだ。
というか、私の「オナホでペットロス」はここからきている。
かくして女子中学生が公園の茂みに隠してコンドームを飼うドキドキの放課後がスタートした。
水をたっぷり飲んでたぷたぷになったコンドームのかわいさたるや。
まだ飼ったことがない人はぜひ飼ってほしい。
安価でエサ代もかからずスペースもとらないし鳴かないし従順だし……。
一人暮らしにもぴったりだと思うんですよね。
おたくの推しにもコンドーム、飼わせてみたらいかがですか?
遠距離恋愛の攻めを思うたびにさみしくてペットを飼おうとするも、アパートがペット不可なので彼が置いて行ったコンドームに水を溜めて洗面器の中で飼育を……? ……?
自分のカップリング観のあり方に皆目見当がつかなくなってきた。狂いそう~^
まぁなんというかしかし、今受けの行動として挙げたのが我々のコンドーム水風船の飼い方であった。
学校が終わると公園に立ち寄って、ぷにぷにつんつんする。
抱っこしようとするとブルン! とたっぷり水を溜めこんだ体がすべって逃げていく。
ぺちぺち叩けば洗面器の中でビチビチ暴れるその生き物がいとおしくてしかたなかった。
名前までつけていた。ポチだったか、タロだったか……。犬と同じ扱いである。
生類憐みの令に犬だけじゃなくコンドームも含ませるべきだと思う。
この間の『限界腐女子、大人のオモチャを買い込む』を読んだ人はもうお気づきのことと思うが、アダルトグッズを飼うともちろんあれがやってくる。
ペットロス。
私たちが飼っていたコンドームは、わずか四日で帰らぬコンドームとなった。
いつもどおり公園を訪れた私たちを待っていたのは変わり果てたコンドームであった。
破裂し、無惨にもゴムの破片になったかわいいペットの亡骸と血の代わりの水たまり。
これが人間のやることかよ!
先の尖った木の枝などでオモシロ半分につつかれて破裂したのは明確だった。
やりどころのない怒り! 女子高生はジャングルジムによじ登り、あのバネでびよんびよんなるパンダとかの乗り物に立ち乗りし咆哮した!
窓を開けて即座にキレる爺さん!スタンバイでもしてたのか?!
争いは何も生まない。悲しみだけが広がっていくだけだ……。

コンドームはセーフセックスの象徴だ。
セーフセックスは望まれない妊娠をなくし、性病を予防する。
これは平和への足掛かりだ。
コンドームは、平和の象徴……。平和の象徴を、見ず知らずの誰かが、誰……クソ……!
こんなの、戦争だろうが…………!!!


これは本当に余談ながら、私はいまだコンドームをセックスを目的として使用していない。
とうに成人した私は今も時折コンドームを膨らましバレーをしたり、水を溜めてぷにょぷにょのペットにしたりする。
働き始めてお金にそこそこ余裕もできたので、無駄に光るコンドームだって買えちゃうのだ!
そして今それに付き合ってくれるのは、もっぱら弟なのである。
女子中学生時代、キラキラ輝くアホ下ネタの日々で私に付き合ってくれたみんな。
みんな、結婚しちゃったり腐女子を卒業したりしたね。
私ひとりだけが、あの日の公園で今もコンドームを飼っている。
急にさみしさがこみあげてきて収拾つかなくなってきたので、もうこのへんで終わっていいですか?
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Posted at 11:36 | 小話 |
2017.04.12

『りんりん、病院に行こうよ』

りんりんが死んでしまった。
末期のがんだったらしい。

りんりんというのは、私が懐いてたおじさんだ。
父親の友人なので親子ほど歳が離れていたが、私は彼をりんりんと呼んだ。
私のお父さんはそこそこのレベルのろくでなしだったので、私を連れてよく徹夜マージャンに励んでいた。
りんりんは大体いつもその会場にいて、私と遊んでくれていた。
彼はマージャンが弱いのだ。
早々に負けてしまうと、酒もそこそこに幼い私と遊び始めるやさしいおじさん。
徹夜マージャンに連れて行かれては水割りをつくる役だった私に、水割りの作り方を教えてくれたのもりんりんだ。
まだ掛け算も覚えきらない子どもがそこそこちゃんとした水割りを作れるようになったのはりんりんのおかげ。
他のおっさんはかわいいロリ(私は当時はめちゃくちゃかわいかったんで)に酒の注文を当然のようにするばっかりなのでクソだ。
徹夜マージャン会場の家には子どもが引っ張り出せるような布団がなかったので床に寝ていたのだが、りんりんは勝手がいまいちわからないゴミ屋敷をウロウロしたあと、自分のジャケットを貸してくれた。
ほこりまみれの絨毯や冷たいフローリングの上に寝るのとは全然違う。
りんりんのジャケットはお父さんのよりも少しだけマシなにおいがした。
焼肉をした時も、「飴ヌ、肉焼けたぞ」とどんどんお皿に良い焼け具合のお肉を乗せてくれた。
子どもっぽい大人ばかりの中で、体の小さい子どもが食いっぱぐれなかったのは彼のおかげだ。
りんりんはおしゃべりでも気さくでもなかったし、どちらかと言えばぶっきらぼうなおじさんだったが、子どもにはとてもやさしかったので私はりんりんが大好きだった。
徹夜マージャン会場のおうちの子も「おっさんたちの中ではりんりんが一番すき」と意見を一致させた。
突然プレゼントをくれたこともある。
子どもの私が抱えると顔が半分見えなくなってしまうくらいの大きなテディベアで、お母さんが「りんりん、これ高かったんじゃないの?」と聞いたがりんりんは「いや、懸賞で当たったんだわ」とだけ言って帰って行った。
でも私は知っている。
りんりんがくれたテディベアは、特定の商品を買ってシールを何十枚も集めて、さらにそれに追加して3000円くらい支払って手に入れる限定のくまさんだ。
シールは偶然たまったにしても、3000円追加してくれたのがうれしい。
もしかしたら人にもらったのかもしれないが、新品の3000円+シール代金のテディベアってそんなにポンともらえるんだろうか?
今となっては、本当の入手経路はわからない。

小学校も高学年となると、少しはクールさを手に入れ劣悪環境と焼肉を天秤にかける頭の回転を手に入れ、私は焼肉付き徹夜マージャンについて行かないようになった。
焼肉は惜しいが、成長しはじめた私をからかうおっさんもいやだったし。
私とりんりんはちょっと疎遠になったが、交流は続く。
りんりんのお仕事は大工さん(だと思う)なので、困ったことがあるとなにかと出張修理を請け負ってくれたからだ。
これは私がそこそこからまずまずにランクアップし最終的に完全なろくでなしになったお父さんのもとを逃げ出してからも続いた。
元はお父さんの友だちのりんりんだが、お母さんにも親切だった。
それがまた私のりんりん好感度をアップさせていた。
なんでもできる大工さんのりんりんはいろんなものを修理してくれた。
蛇口、へし折れたトイレの蓋、食器棚の引き戸、棚……。
弟のためにロフトベッドを買った時に組み立ててくれたのもりんりんだ。
そんなりんりんだが、怪我が多いのも印象深かった。
まだ徹夜マージャン大会へついて行っていたころ、一向にマージャンに参加しないりんりんに「どうしたの? お金ないの?」と声をかけたら、無言で腫れ上がって紫色になった親指を見せてきた。
もう親指っていうか、手にアケビくっつけてるんですか? みたいな感じ。
「お医者さん行ったの!?」とわあわあ騒ぐ私にりんりんは「いやぁ、いいよ。治るから」と言っただけだった。
マージャン牌つかむのが痛くて参加してないくせにこのおっさんは何を言ってんだ? と思ったが、りんりんには焼肉やジャケットの恩義があるので私はとりあえず「そうなんだ」と言ったような気がする。
親指を金づちで思いっきり打ち付けただか角材と角材の間に挟めただか、理由がどれだかわからなくなるくらいりんりんはしょっちゅう怪我をしていた。
それで、そのたびに「いいよいいよ、そのうち良くなる」と言うばっかりで、病院には行かなかった。
風邪を引いてもそんな調子なので、一回そこそころくでなしのお父さんとゼリーを持ってお見舞いに行ったことがある。
りんりんは小学生より病院が嫌いなおじさんだった。

そんなりんりんが死んでしまった。
最初に書いたとおり、末期のがんだった。
私はがんの症状に詳しくないし、りんりんの親族でもないので詳細は聞いていない。
でも、体の調子がいよいよ悪くなって病院に運び込まれて検査された時にはもう手遅れだったと人づてに聞いた。
りんりんはそんなになるまで病院に行かなかったらしい。
全身に転移するだか、そこまで行ったら体も強めに危険信号を出していたんじゃないだろうか。
ちょっと変だなって具合の時に病院に行ってれば、りんりんはもう少し長生きできたんじゃないだろうか。
そう思わずにはいられない。
でも私には、体調が悪くなったりんりんが「いいよいいよ、そのうち良くなる」といつもの調子で病院に行かなかったのが容易に想像できてしまった。

いつもと違うな
なんかおかしいな
体がだるいな
どこかが痛いな
そう思ったら、すぐ病院に行ってくれと私は思う。
別になんでもないなら、それでいい。
なんでもなかったって安心をお金を払って買うようなものだから、病院に行ってくれないかと思うのだ。
私もりんりんのことを言えないので、足の怪我を大したことないと放っておいたせいで今も雨の日はしくしく痛む。
あとついでにメンタルも破裂寸前まで放置したので躁うつ病になった。
やっぱり定期的なメディカルチェックほど大事なものはない。
人間も機械と同じでメンテナンスしないと長く使えないみたいだ。
なんでもなくてもたまに検診するのも大事だよね!
大人になると会社の定期検診でもない限り受けなくなるし、自営業ならなおさら。
自分の体は自分で気遣ってあげるべきなのだ。



余談にはなるが、私はりんりんのお葬式に行けなかった。
完全なろくでなしにランクアップした後も着実にレベルを上げるお父さんが来る可能性があったからだ。
私はお悔み欄に三行で書かれたりんりんの葬儀の情報に向かって手を合わせただけだった。
それが残念でならない。

Posted at 11:08 | 小話 |
2017.04.11

『限界腐女子、大人のオモチャを買い込む』

大人のオモチャ、買ったことありますか。
私はあります。

昨今は女性の自慰行為をケアとかプレジャーとかソフトに呼んで解放していく向きがあり、女性がそういった商品を買うのもそんなに隠すことでもなくなってきたのではないでしょうか?
とはいえ大っぴらに買ったぞ!と喧伝して回る必要もないものですが。
なぜなら大人のオモチャ=ちょっとエッチな使い方❤というのが当然だからであります。

しかし、私は大人のオモチャをあれこれ買ってきましたが、いまだ本来の使い方をしたことがマジでありません。
今回は私とベッドをともにできなかったいろんな大人のオモチャたちの話をしたいと思います。

①電マ
正式名称を「ハンドマッサージャー」というあいつ。
これ、別にアダルトグッズでもなんでもないですけど、そういう通販サイトで買えますよね。
性的に楽しむための機能を追加するアタッチメントとかもあったりして、大人のオモチャの扱いをされることも多いのでは。
全然関係ない話ですが私は電マ責めエロ漫画が世界一好きなので、なんかオススメあったら教えてくださいね。
みんな忘れてるかもしれないけどこれはあくまでマッサージ器なのです。
AVの撮影所よりもばーちゃん家にあるのが正しいのだ。
私はこれを母の日のプレゼントとして買いました。
きれいにプレゼント包装された電マを受け取ったその時、「あっ そういえばこれって」と思い出した。
でも、マッサージ器には違いないし変に意識するほうがおかしい。
お母さん喜んでくれてるし! 大丈夫! 正解!
今もそう念じながら、居間の隅に置かれた電マを見ている。
電マ責めエロ漫画を読みながら。

②ローター
これはかなり王道も王道なのではないでしょうか。
男性向け女性向け問わず頻出する大人のオモチャのエースです。
「今日はこれを挿れたまま行動しろ」と強制され、嫌なはずなのに微弱な振動に体が高まり……みたいな。
さて、微弱な振動で焦らされた体がいきなり強にされた振動で絶頂する……このお約束パターンを生む道具の真の実力とはいかに。
気になったら手に入れてみないわけにはいきません。
しかし、このローターというやつ、非常に安い。
有線ならひとつ100円のものもあるくらいのお手頃グッズなのだ。
だから下手にそれだけ買おうとすると、送料のほうが高くついてしまう!
もういっそダイソーで売ってくれんか。
攻めも100円ぽっちで受けをあんなに悶えさせたりしてるんだと思うと、なんてリーズナブルな変態プレイであろうか。
100円の商品の送料で500円くらいかかるのめちゃくちゃムカつくじゃないですか。損したみたいで。
というわけで、私は10個買いました。
ローター10個セットって商品があるのだ。消耗品だからね、まとめ買いがお得なんだね。
アホなので10個も買ってどうすんだとはちっとも思ってなかったです。
全国の攻めもこうして10個セットで買ってるのかな。それってかわいくないですか?
満を持して届いた10個セットのローターの威力ですが、これに関してはもうひたすらに悲しかったです。
今や絶滅危惧に瀕した折り畳み式携帯のバイブレーションのほうが強いのでは。
私がやっすいの買ったせいだと思うんですけど。
頬に当て強弱のつまみをひねる度、プルプルと震えるはチワワのごとし。
こんなの入れてることを忘れるんじゃないでしょうか。
これ読んでるリアル友だち、もう私のことは捨ててくれって感じですけど、切れ痔を患った我が尻穴をもってしてもこの振動とサイズ感は多分入ってても入ってなくても変わんないと思う。
尻の中で震えるローターのことを思いながら一句読めるくらいの塩梅なのである。
ローター、一つ猫じゃらしてる間にコード切れて捨てた以外は全くの未使用で残ってますのでいかがですか。
ご連絡いただければ送ります。

③バイブ
さまざまな形がある、これもまた定番アイテムですよね。
私はこれをプレゼントされました。この経緯については割愛しますが、これに関してだけはいただきものなのです。
蓋を開け、バイブと向き合った私はまず商品名で笑いました。
命名「スーパーアクメDX」
すがすがしいネーミングと下品極まるロゴ、けばけばしいピンク。
形はなんとなくサボテンに似ていて、膣挿入用の棒と陰核刺激用のアームに枝分かれしています。
パッケージを読むに、先がまあるくコブのようになった棒がGスポットを刺激! たちまちアクメ! とのこと。
私の処女は事故(転んで定規が刺さったのだ)によって失われているのですが、なんとなくこいつに侵入を許すのは癪だなと思って使ってないのですが、口コミ評価は上々のようであります。
私はこれを捨てるために、アホなので「ごみ分別大辞典」で「バイブレーター」を必死に調べました。
そんなもの書いてあるわけない。

④ローション
いろんなところの滑りをよくするための必須アイテム。
特に、福利厚生の行き届いたBL小説には欠かせないですね。
私は福利厚生最悪のスラムリンチレイプが好きなのであんまり登場させないんですけど、ふつう優しい攻めは用意してくれてると思います。
スーパー攻めさまはなぜか必ずサイドボードの一番下の段からコンドームと一緒に出してきます。
そういう攻めは「あ~、絶やさないように準備してんだな~」と見ていてやさしい気持ちになる。
あと、ちょっとズボラな大学生受けがベッドの下からビニール袋に入れたまんまのローションボトルをガサガサ出してくるのかわいい。ドラッグストアでペペローション買ってんのめちゃかわいくないですか?
私はズボラな面がある部屋ではスウェット派の大学生受けではないんですけど、私もドラッグストアでローションを買いました。
目的は彼氏とのプレシャスな時間のため……。
ではなく、ずっと待ち望んでいた推しのフィギュアにぶっかけるためです!
当初の目的はあっさり果たされ、私は大満足。
ですが、後先考えないアホの私はそこでやっと「残りどうしよう」と気づきました。
今は使い切りのパック売りもあるのになぜか大ボトルで買ってしまったのだ。
しかし私はプレジャーを定期的に楽しむタイプではない。彼氏もいない。
そんなに頻繁にフィギュアにローション垂らして喜べるタイプでもない。一回やったら飽きた。
ローションはたっぷり残っている。このまま捨てるのは忍びなかった。
「そうだ、飲もう」
それを思いつくのにそう時間はかからなかったと思う。
ペペローションは「万が一口に入っても問題ない」と明記されている。
じゃあ飲んでもいいんじゃないか?
知能が退化した成人女性はほぼ口唇期の赤ん坊なのでなんでも口に入れるのだ。
ちなみに、ローションは甘いです。
ポリ系の甘味があり後から独特のほんのりした苦味が追いかけてくるような感じで非常に飲みやすい。
そのままだと粘度が高いので若干希釈するとのどごしも良いと思われます。
また、食事のお供にも。
辛口カレーにかけるとなんとも言えぬ甘味が追加されるし、チャーハンにかけるとあんかけっぽいです。
ホットケーキにはちみつの代わりにかけるのはどうかと試しましたが、それは甘味が足りませんでした。
とにかく量があったのでいろいろ試したので、そのうちだれか聞いてください。
まだ残ってるんですが、これもうそろそろ賞味期限来るのかなぁ?
元が食品じゃないのでなんとも言えないですけど……。
腐るんですかね?
なんにしても、体によくはないだろうな、と思いながら定期的に飲んでいます。

⑤ディルド
真打登場といったところではないでしょうか?
バイブよりももっとシンプルに、男性器を模したザ・王道で無骨なアイテム。
そもそもなんで買ったかというと、私が処女で腐女子だからです。
BLって基本的に男と男の恋愛であってベッドシーンは棒と棒の戦いです。
でも処女だからよくよく考えてみるとその肝心の「棒」と向き合ったことがなかったのです。
限界喪腐女子は画像データになった男性器しか知らない……。
それで十分と見る向きもあるでしょうが、実際のところどういう質量なのか知りたく思いました。
クソバカエピソードですけど恥を忍んで言えば、まず紙粘土でちんちんを制作しました。
日本人の平均サイズをネット検索し真剣に作業する姿、その情熱をもっと別のところに活かせれば人生もう少し変わっていたんじゃないかと思うけど、性分がこうだから仕方ない。
でもやっぱり自分で作ったのはなんか違ったんだよな。
狂った成人女性が陶芸家のごとく「こうじゃない!」とまだ乾いていないやわらかいちんちん粘土細工を叩き壊すところ、もうギャグ通り越してホラーの域では?
かくして私はさらなる高み、さらなるリアルを求めディルド購入に至ったのです。
塩ビ製なのか若干の臭気を放つゴムっぽい感触のディルドを手に、私はめちゃくちゃ頷いていました。
浮かび上がった血管も表現された怒張は限界喪腐女子の知的好奇心を満たすには十分な代物。
ここで満足いかなかったら出会い系で本物を探し、腐的好奇心のために対人間の処女を失っていたと思うのでここで止まれてよかったねと拍手してほしい。
でもまた困ったのがこいつの始末です。
なにせ私の家はプライベート・プライバシー・プライド無しの3P住宅なので、こんなもん隠す場所がないのです。
私には自分の部屋もないし、自分の私物引出しも家族が勝手に開けるので不安があります。
だから使わないならさっさと捨てちまうに限るのです。
結局こいつは、本来の役目を一切果たすことなく(吸盤で風呂の壁にちんちんを生やしたりしてひとしきり大笑いするとかはした)キッチンばさみでバラバラに切り刻まれて捨てられました。
この作業になんの感情も伴わなかったのは私が女だったおかげですね。
男だったらこの作業を敢行するのに何か複雑な感情や痛みがあったものと思われます。
いや、そもそもちんちんが生えてればこんな無駄な出費や作業必要なかったんですけど。

⑥オナホ
ディルドと一緒にこいつも買ってみた。
男のプレジャータイムのお供として呼び声高いオナホールです。
残念ながら私は女なのでこれを体験できないけど、疑似ちんちんを購入したタイミングで買えば挿入の際にどういう働きをするのかわかると思って……。
結果から言うんですけど。世の中のオナホメーカーは今すぐ2メートルのオナホを作るべき。
箱から出して手に取った瞬間、私は至福に包まれた。
ふっかふか、すべすべ、もちもち……。
どの言葉もぴったりなようで違うような、素晴らしいさわり心地。
赤ちゃんのほっぺやおねーさんのおっぱいにも劣らぬこの感触、まさしく極楽。
私は速攻Googleで「オナホ 寝袋 Amazon」で検索していた。
なんでオナホと同じ素材でできた寝袋がない?!
こんなサイコーのさわり心地、ちんちん突っ込んでゴシゴシしてる場合か!
一刻も早く全身包まれるべきだろ!!!
しばらくふにふに揉んでみたり中に指を入れてみたり、完全にトランス状態だった。
こんなん、童貞のちんちんに与えたらヤバない?
近所の大学生のおにーちゃんにオナホにもらって夢中になる男子中学生の信ぴょう性が147861863454%になった。
私がちょっと雌っぽい大学生のおにーちゃんだったら近所に住んでて昔からよく遊んであげてた男の子にオナホプレゼントすると思う。それで「本物も試してみる?」と笑いかけると思う。
このオナホについては、処分に困らなかった。
この至福の時からわずか数時間でオナホが急死するからである。
ひとしきりオナホを楽しんだ私は当初の使用方法として考えていたディルド挿入を遂行した。
ローションをまとわせ(初めてこのローションは食用以外のマトモな用途で使われた)ディルドをにゅるりと挿入したその時、3P住宅にお母さんが帰ってきた!
私はもういい大人なので何を買おうが自分のお金だし文句は言われないと思うけど、物が物だけに見つかるとバツがわるいに決まっている。
大慌てで布団と棚の隙間にオナホを突っ込んで隠した。
ディルドがささったまま……。
そして、再び家族の目を盗んでオナホを回収した時、オナホは死んでいた。
ふにふにだったオナホは内側からしみだしたような油にまみれ、溶けて至る所に大穴があいていた。
オナホの素材とディルドの素材が合わなかったのだろうか。
なんらかの化学変化が起きてしまったのか、オナホはグズグズに溶けて二目と見られぬ姿になって……。
私は泣いた。マジで泣いた。
軽いペットロスである。
当時ツイッターをフォローしておられた方の中には記憶にある方もいようと思うが、「こんな思いをするのなら花や草に生まれたかった」と言ってオナホの葬式をしていた。
あれ以来、新しいオナホは買っていない。
私はあのオナホが良かったんだ。あのオナホと暮らしたかったんだ……。


6つの大人のオモチャとの思い出を書いたけど、書きながら「こいつアホなのか?」と思わずにいられなかった。
でも、こういうクソバカ理由で大人のオモチャ買っては無駄にしてる人間もいるから、本来の目的で買うのに罪悪感を覚えたり必要以上に恥ずかしがったりする必要一切ないと私は思う。
おそらく、大人のオモチャたちも本来の目的に使ってもらえるほうが本望であろう。
またクソバカ理由で大人のオモチャ買ったらレポしますけど、これが何の役に立つというのか。
何の役にも立たないだろうな……。
でもほんと、余ったローター譲渡とかローション料理レシピとか、いつでも承りますから!


Posted at 20:35 | 小話 |
2017.04.11

溺れてるけど、藁を掴むのが下手すぎる

私事も私事であるが、彼氏との交際が昨日で半年とのことである。
LINEで連絡があって初めて私はそれを知った。
0時きっかりにきたあたたかいメッセージになんと返したものか悩んでもう一日が過ぎた……。
なんて返したらいいのか本当にわからない。
私は彼をなんとも思っていないので。

ところで、これを読むあなたにとって「生きるよすが」とはなんだろうか?
生きる意味とかよりどころとか、そういうものが誰しもひとつはあるのではないかと思う。
たとえばそれは家族だったり趣味だったり将来の夢だったり。
日々ボーッとなんにも考えずに生きているという人もよくよく考えればきっとある。
しかしながら、心の調子を崩すとそういったものがなくなってしまうのもまた事実なのだ。
私は社会人三年目の初夏、精神のバランスを大いに崩した。
もともとうつ傾向が強く通院していたのが任せられた仕事の大きさに耐えられずひどくなって、という経緯があるのだがそれは今回のことには深く関わってこないので割愛する。
ともかく、私はなんやかんやで躁うつ病の診断を受けるに至った。
うつ状態に陥り深く落ち込んだ私は今まで「ボーッとなんにも考えずに生きていた」状態が保てなくなってしまった。
無意識的に持っていた生きるよすがを完全に見失ったのである。
何も手につかなくなった。
本どころか漫画も読めなくなり、テレビ番組も聞き流せはするが理解できなくなった。
飼い猫もかわいがる気が起きない。風呂も歯磨きも立ち上がるのもおっくうになった。
幸いにも拒食・不眠状態というより過食・過眠になったので、空いた時間は泣いてるか食べてるか吐いてるか寝てるかしてればよかった。
とりあえずやることはあったのでラッキーなほうだ。体重は7キロ増えたけど……。
しかしながら「これがあるからがんばるぞ!」「明日は予定があるから今日これを済ませておかなきゃ」など日々の糧を一切忘れてしまった状態なので、もう完全にオワリを感じていた。
ボーッとなんにも考えずにワハワハ笑って生きていたのが、ボーッとしながら死を考えるようになったのでとりあえずクオリティ・オブ・ライフがマイナスなのはわかってほしい。
もっとつらい人たくさんいると思うんですけど、この苦しみは私だけのものなのでとりあえず言わせておいてください。
生きるよすががない。
キツい。
早めに死にたい。
ここから逃れさせてくれ。
生きる価値なし……。
このあたり、ツイッター見てた人に指摘されたのだが明らかにおかしくなっていたという。
本人は自覚がない。毎日苦痛だったかもな???と思うくらいで。(今はサイコ~にハイ!です)
何もしなくても涙が出るなか、とりあえず出社しては会社の便所で腕をスパスパ切る日々。
しかし、そんな毎日にある日突然転機到来!
躁のお通りである。
急にムクムクと不思議な自信があふれてきたのを覚えている。
「あ、風呂入らなきゃ」と思った。風呂上り、鏡を見て突然「私は世界一かわいい」と思った。
久しぶりに髪の毛をきちんとドライヤーで乾かしながら、私は昨日まで考えることもできなかった明日のことを考えていた。
本人は全くこの変化を自覚していなかったが、躁期間に入った私はいろんなものを求め始める。
漫画ほしい!(でも開いたところで集中できなくて内容を理解できはしない)
新しい服、新しい靴買わなきゃ!(買うだけで袋から出せない)
メガネを新調したい!(これ、マジで似合わないの買ったから今もかけてない)
お母さんに映画とごはんをおごりたい!(これはちゃんとおごりました)
自転車でバンバン出かけたい!
その流れで、ずっとお休みしていたアウトドア系のサークル活動も再開した。

しかし、アップ期間はそう長く続かなかった。
私はウルトラマンのごとく躁の期間が短いたちらしい。
また緩やかな精神状態の降下が始まった。
一度取り戻した意欲が徐々に失われていくのを知覚するのは驚くほど恐ろしい。
ズルズル落ちていくなか、私は「生きるよすががまたなくなっちゃうぞ」と恐怖した。
私は必死にたのしそ~!なことを試した。
漫画がダメだったのでアニメを見た。漫画原作ミュージカルも見てみた。
カラオケに行ってみた。
一人スイーツバイキングも敢行した。
公園にお弁当を持って行ってみたりもした。
手当たり次第である。
まさに、溺れる者は藁をもつかむ。
うつの濁流に流されかける私が手を伸ばしまくった藁に、一つ引っかかるものがあった。
鉄血のオルフェンズであった。
dアニメストアで一気見しながら私はホッとした。
「これ、たのしい。しばらく大丈夫そう」
それにかぶりつくことでモチベーションが保てるのを感じ、思ったのだ。
「この調子でとりあえず手当たり次第掴んでみてひとつでも生きるよすが候補を増やそう」

ここでやっと冒頭の彼氏の話題に戻る。
本当に長々書いてしまって冗長極まる。私はあんまり簡潔に書くのが得意でないので。
私がいわゆる「恋人」を得たのは「生きるよすが」になればいいと思ったからだ。
鉄血のオルフェンズ一期を全部見終わった私は、二期開始までの間にさらによすが候補を集めることに腐心した。
溺れる者は藁をつかみまくる。
気分が下降しないよう、(本人はそれはそれで問題だとは思っていなかったので)永遠にこの最高にハイな気分が続くよう、とにかく流れてくる藁に手を伸ばしてつかんでみた。
その一つが「恋愛」であった。
世には恋愛至上主義なる考え方がある。恋愛なしに生きるのはもったいない、とも。
恋愛を主題にしたドラマ、映画、小説、漫画にも事欠かない。
私はしばらく恋愛をしていなかった。
誰も妖怪化した腐女子の恋愛遍歴なんか聞きたくもないと思うのだが、長続きしたり深い関係にならなかったにしてもとりあえず告白されて付き合ってみたことはある。
しかしそれらを中心に生活を送るということは経験がなかった。
その人無しで生きることが考えられない!めっちゃ好き!という感情がそこまで強くない暮らしを送ってきたからだ。生身の人間への執着心が薄い妖怪腐女子なので。
でも今は違うかもしれない。私は最後に彼氏がいた時よりずっと年齢を重ねた。
試してみる価値はあると思った。
私はその時、自分はなんでもできるという万能感に狂っていたので、止まる理性は存在しない。
行動は早かった。
「付き合ってくれ! 私のこと嫌いか!? 嫌いではないよね?! じゃあ、付き合おう!」
予備動作一切無しのストレート剛速球を身近な男性の腹に食らわせ気絶させるまで、マジで2日とかからなかった。
躁状態のイッちまってる女の気迫負けしたのか、それとも私のことちょっと気になってたのか、相手があんな脅迫のような告白にオーケーしたのもめちゃくちゃにクレイジーだと思う。
彼は気が弱い童貞だった。
私はまた一本、藁をつかんだ。

しかし、私は愚かなのでその時ちっとも考えていなかった。
この「恋愛」なる藁は、他の藁と違って一度つかむと簡単に手放せないことに。
非常に不純な動機から始まったわれわれの交際は難航を極めた。
まず好きになることから始めなければならなかったからだ。
卵が先か鶏が先か、というが、こと恋愛に関しては「好き」が先に来ていてしかるべきだろう。
なのに感情なく無理矢理に「交際」のほうから始めてしまったものだからもうめちゃくちゃだ。
彼氏になった男性はなかなかにオモシロ人材なので、心のない半年の付き合いであってもそこそこにスベらないネタもあるのだが、今回の話には直接のかかわりはないので割愛する。
(とりあえず、知り合い全員に「なんで付き合った?」「別れたほうがいいって」と言われる人材であることだけお伝えしたい。彼は大学中退で無職でニートなのだ。でも彼はいいやつだと私は思う)
恋や愛を目的としたものでない恋愛関係に案の定私はすぐに飽きてしまった。
「LINEは毎日しよう」
「記念日はお祝いしよう」
その頃、私のテンションはまた緩やかに下降を始めていた。
鉄血のオルフェンズ二期開始まで案外時間が空いていたせいだと、今にして思えばわかる。
ともかく「毎日○○をする」という義務が非常にうっとうしくなっていた。
自分から始めた交際になにを文句つけてるのかと糾弾されたらもうすみませんと言うほかない。
もう完全にクソ人間もクソ人間。
彼氏が優柔不断で、デートの行先やごはんのお店なんかも全部私が提案しなきゃいけなかったのもズッシリくる重たさに拍車をかけた。
まぁ、でも彼氏は悪くないのだ。いいやつなのだ。
彼氏はふつうに「恋愛」を真っ当に求めてきていたのに、私だけがそこに「生きるよすが」という可能性を求めていたお門違い野郎だから。

付き合い始めて三か月記念の日、彼氏がお母さんからのお小遣いで食事の代金をちょっと多く払ってくれた時。
私は決定的に「違うな……」と思った。
なんかもう彼氏も自分も情けなく思えてしまい、なんかもう会いたくねえなぁ、になった。
三か月間、もしかしたらもしかしたらと期待したものの、これは生きるよすがになりえないのがわかってしまったのである。
遅すぎると思う。
彼氏の時間を無駄に使ってしまって申し訳ない。本当にごめんな……。
いつまで経っても就職しないから…とか仕事の話すると気まずくなるから日常の報告ができないから…とかなにかしら相手にいちゃもんつけようと思えばつけられるのだが、そもそもそこを包み込むほどの「好き!」がなく、勝手にメンヘラ治癒のためのプログラムに組み込もうとした私が悪い!
鉄血のオルフェンズ二期はとっくに始まっていた。
私が毎週楽しみにしているのは、彼氏と顔を合わせる瞬間ではなく鉄血のオルフェンズ最新話放送日であるのは明白だった。
毎週展開を重ねるごとに重苦しくなる任侠ガンダムに完全に興味が移っている。
もともとヤクザものが好きなので、ロボットより任侠に比重が置かれ始めた鉄血のオルフェンズが好きにならないわけがないのだ。
多少の粗くらい見逃してしまう。
しかし、私の人間としての粗は脚本のように見逃せないのだった。
三か月経っても手をつなぐだけの清い関係に周囲は勘ぐり始めた。
まぁ相手もその先を促してもちっとも手を出してこないのですが……(ブスだからですか?)
私の気持ちがカレピッピから離れているのは傍目に見ても明確なのであった。

そんなこんな、とまとめることもできない話だが、そんなこんなでさらに三か月経った。
半年が経過した。
鉄血のオルフェンズは最終回を迎えた。
私の生きるよすがはまたなくなってしまい、現在緩やかな下降を感じている。
毎日緩やかに全部が面倒になっていくのを感じる。
そして、一応私と彼の「恋愛」は続いている。
だがテンションの下降には歯止めがきいていない。
私の生きるよすがは、やっぱり「恋愛」には見いだせていなかったのがいよいよもって証明された。
これは溺れている時につかむ藁ではなかったのだ。

私みたいな全日本無責任他人の時間無駄遣い最悪委員会の会員はツイッターのフォロワーとか、このブログを読んでる人にはいるんだろうか。いてくれ、頼む。安心するから。
でも、そろそろこの最悪委員会から抜ける、もとい藁を手放さなくてはならない。
彼氏の就職が決まりそうなのだ。
彼の初めての仕事は、配管工だ。思わず「マリオかよ」と言ってしまった。
仕事を始めれば絶対私よりマシな女が見つかるはずなのだ。なぜならいいやつだから。
だからそろそろ「付き合って半年だね」LINEにも誠意ある返信をせねばならない。
私は日々緩やかにうつ状態に向かって下降している。
全部がめんどくさくなってオワリ~~~~!になる前に謝っておく必要があるのだ。


最後に、溺れる者は藁をもつかむの意味を今一度確認したい。

「溺れる者は藁をも掴むとは、人は困窮して万策尽きたとき、まったく頼りにならないものにまで必死にすがろうとするというたとえ。」

恋愛自体は「まったく頼りにならないもの」ではないだろう。
ただ、「恋愛関係を持つことで生きるよすがが増えるかも!」という本末転倒意味不明理論で恋人作っても迷惑をかけるだけという話なのだ。
私に言われるまでもないと思うんですけど、他人との関係を築く際の判断は慎重に。
マジでこんなんばっかだな。
なにせ、アルバイト先もマトモに選べない脳みそカラッポ女だから……。
書いてて思いました。もう本当にどうしようもない人間だよ……。
呆れてください。

Posted at 14:52 | 小話 |
2017.04.08

アルバイトを買った話

アルバイト(独)Arbeit
①仕事。労働。
②学問上の労作。著作。
③学生などの内職。バイト。
(講談社「和英併用 現代実用辞典」)

意味の通り、多くの学生が経験する小遣いないし学費稼ぎのアルバイト。
今回は私の初アルバイトと仕事先の狂った店長についてお話したい。

私が初めてアルバイトをしたのは大学1年生になりたて、まだ雪のとけきらない春。
わりに遅咲きなデビューだが、別段高校時代金策に困っていなかったわけではない。
家は貧乏だしお小遣い制度はないし親戚もほとんどいないのでなけなしの貯金で地味に遊び、携帯代も払えないのでずいぶん長く持っていなかった。(友達とハンバーガー食べに行く金がなくて当時自ジャンルだった戦国無双3Zを売ったことから戦犯と呼ばれたこともある)
にも関わらずなぜアルバイトをしてこなかったのかというと、単純に言って
「働かせてもらえなかったから」である。
落ちるのだ。もう、書類選考で落ちる。
二十は落ちた。
当時ワンオペブラックで誰でも採るとさえ言われていた某牛丼チェーンすら落ちた。
なぜあそこまで落ちたのかは今もって謎でしかないが、顔面の問題なのか覇気の問題なのか……。真面目そうな風貌だし声はデカかったと思うんですけど。
そんな折でした、運命の初アルバイト先と出会ったのは。

心機一転大学性生活、今度こそアルバイトを!
と意気込み応募したコンビニで落ちた帰り、何気なく見た求人チラシ。
「オープンスタッフ募集 1名 18:00~22:00 週3日 接客、軽作業 時給××円」
本当にその程度しか書かれていない簡素なチラシ。
なんの店かさえ書いていない。
どうやらチラシを貼っているドアが店舗入り口らしいので看板を見たが、
店名さえ書いていないありさま。暖簾のひとつもないのには驚いた。
しかし、バイトに落ち続けた私にはこの得体の知れなさが逆に光明に見えた。
店の名前も何の店なのかすらわからない店の求人に電話したのは次の日のこと。

冗長になってきたので結論から言うのだが、私はこのアルバイトを店長と喧嘩して辞める、というか売り言葉に買い言葉でクビになる。
私もメンタルヘルス崩壊女(当時はまだ発症してない)だけど、店長も狂ってたからだ!

「求人のチラシを見て連絡させていただいたのですが……」
電話をかけて帰ってきた言葉は
「ああ……。それ、なァ。じゃ、明日の16時。来れる?」
文章では声色までお伝えできないのが苦しい。スカイプとかで形態模写したい。
もう、この時点で「「「ヤバい」」」予感のする声だったのだ。
でもここまで来てひきさがれねぇ。

翌日夕方、看板すらない店の戸を開けた私を待っていたのはカウンターに座った男だった。
年のころは30前半か半ばくらいだろうか。椅子に座るというより寄りかかるようにして、入り口のほうを見ていた。
焼き鳥居酒屋特有の、調理場とカウンターを隔てるプラスチック板。
脚の高い木の椅子。巨木をそのまま切り出したような味のあるカウンターテーブル。
男は室内にも関わらず黒いニット帽を目深に被り、目の色から伝わる表情を隠していた。
タバコの灰が灰皿にトントンと落とされる。
短くなったタバコを挟む中指に入った星の入れ墨に思わず目が行く。
無精ひげのある口がシニカルに持ち上がり、けだるく開かれる。
「ボーッと突っ立ってんなよ。バイト希望だろ? 入れよ」
これ、ヤバくないと思う人間いるか?
どう考えても「「「ヤバい」」」店に面接に来ちまったと5秒で思うだろ。
こんな描写が必要なこと日常にほとんどないし、そのポーズで待ち構えてる奴はまず正気じゃないだろ。ここはどこだ?現実なのか?
男は自分の前の椅子を引いて「ここ、座って」と顎で促してきた。
もう明らかにヤバさを感じている。すでに帰りたい。マトモな空間じゃない。
しかしそう言われては「間違えました」と言って帰るわけにもいかぬ。
おとなしく腰掛けた私に、男はまた唇の端を持ち上げるだけのシニカルな笑みを浮かべた。
「お前、バイト受かんねぇだろ」
「えっ。いや、まぁ、確かに何件も落ちてますが……」
「歳は? 大学生だろ? 履歴書、出して」
おずおず履歴書の入った封筒を差し出すと男はタバコを置いてそれを受け取った。
近づいてきた右手の中指に入った星マークの入れ墨が黒でなくて紺色なのに、私はその時気が付いた。
「お前、ウチで雇ってやるよ」
履歴書はまだ封筒に三つ折りで入ったままである。見てさえいない。
「俺ァ、店長の山城。店長とか山城さんとかじゃなくて、ヤマって呼べ」
これがヤマこと狂った店長との出会いだった。
ヤバい。逃げたい。 もうそれしか考えられなかった。

しかし三日後、私は店の前にいた。
ヤマは明らかにヤバい。あんな中二病感ビシビシの30代、ヤバくないわけない。
今回は割愛するが中学時代バリバリの邪気眼電波女として自分に宿った熾天使(セラフィム)と会話してた私をもってしても中学卒業までにはなんとかそのいなたいヤバさから立ち直れたのに、ヤマは30過ぎてもあの特有オーラを維持している。
絶対関わらないほうがいいのだが、しかし背に腹は代えられなかった。
大学生になったら何に変えても携帯電話が必要なのだ。
金がほしい。その一心の私に救いの手を差し伸べたのはヤマなのだ。
乗りかかった舟である。たとえ泥船でも乗ってやるつもりだった。
しかしながら、乗った舟は泥舟ではなくてなんかもっとヤバいものだったのを私はまだ知らない。

ヤマの店は焼き鳥居酒屋だった。
各地を食べ歩いて見つけたこだわりの地鶏を使った串を提供するのだという。
「……ヤマさん、この店看板はないんですか?」
初出勤日、聞かずにはいられなかった。オープンして一週間は経っていると聞いたのにまだ看板も暖簾も見当たらなかったからだ。
「お前、バカ か?」
ぶつ切りの鳥もも肉を串に刺し刺し、こちらを向いたヤマは少し語気を強めてそう返してきた。
「なんの店かわかんねぇけどなんかを感じて入ってくる、そういう客だけでイイんだよ」
わかってねぇなァ。 ヤマはまた肉に視線を戻す。
「はぁ……。でも店名もわかんないですよ」
「別にメシ食うのに名前なんか関係ねェだろ。俺らだけがここが『ヨキジ』だ ってわかってりゃいい」
私はここで初めて自分が働くことになる店の名前を知った。面接でも言われなかったので。
俺らだけがわかってりゃいいっていうか、店長しかわかってないんですけど。
唯一従業員の従業員もわかってないんですが、と言いたいのをこらえ私はジョッキを磨いた。

三回目の出勤。
客が来ない。初回も、二回目も来てない。
私がシフトじゃないときは来たのか、ヤマには聞けなかった。
ここ潰れんじゃないか? そう思いながらとりあえず、誰も出入りしないので汚れてるわけもない床を掃き掃除していた。
掃き掃除の次は拭き掃除。これは何もしてなくても埃が積もるしやる価値があって良い。
カウンターテーブルを拭いている間、ヤマは手持無沙汰なのか私にぽつぽつ話しかけてくる。
聞くに、私が拭いているカウンターは、最初の見立て通り巨木をそのまま切り出したもので継ぎ目がないのだという。
ヤマは居ぬきでこの居酒屋店舗を借りたのだそうだ。前は昔ながらの赤提灯だったらしい。
今の店内は、このあたりの店にしてはオシャレだ。
常連しか集まらない古い居酒屋という感じは払しょくされている。
壁の棚にはレコードが飾られていた。
「ヤマさん、ストレイキャッツすきなんですか」
吠える虎がプリントされた紙のパッケージに入ったレコードは80年代ロカビリーの代表格ストレイキャッツのものだ。
「……別に。俺ァ、猫が好きなだけ。で、やってんのはロカビリーじゃなくてロックだ」
ヤマは中指を突き立てて私にファックポーズしてきやがった。
入れ墨の星が逆さ五芒星になる。
おお、悪魔信者かよ! とあまりの強いサブカル臭気にもう卒倒寸前。
ロッカーなのも予想通りすぎて、もうここまでくると「次はなにを見せてくれんだ?」という気持ちになってきていた。

3回目の出勤にしてやっと店名を知ったような私は知らないことだらけだった。
ヤマが仕事を教えてくれないからである。
「俺ァお前に指図しねぇ。考えて動いて、覚えろ。そんだけだ」
カッコイイ言葉だ。
でもこれはヤマが私とおんなじ仕事をしてて、見て盗めとかそういう時に使うのではなかろうかと、社会人になった今も思う。
ヤマは仕込みをしてるし厨房担当なわけで、私のお手本はしてくれない。
そして私は全くの未経験であって、考えるための基礎すらないのだ。それにこの店の物の場所も料金体系も何もしらない。ヤマもそれを織り込み済みで雇ってくれたのはなかったのか……。
とりあえず、客が来ないので汚れることもない食器をとにかく磨いた。
考えた結果出せた仕事案がこれと掃除しかなかったから仕方ない。ヤマも何も言わなかったので、多分間違いでなかったのだと信じたい。
ヤマは基本的にぶっきらぼうで、楽しくおしゃべりするタイプではない。
話したところでまるで少年漫画のクールな先輩戦士みたいなことを言うだけだ。
気まずい時間。せめて来てくれ。客、頼む。
私と同じで看板がなくても入るアホ、通りかかってくれ頼む!
もう神に祈り始めた時、ガラッと店の戸が開いた。
「あっ、あっ、い、いらっしゃいませ!!!
コミュニケーションに問題があるからというよりあまりに不意打ちだった初来店にあいさつすら噛む私の脛をカウンターの下でヤマが軽く蹴っ飛ばす。
「ヤマ! 来たよっ!」
客は戸を開けるや否やヤマのいる調理場をのぞきこんだ。
こげ茶色のボブカット、色白な美人で、あの帽子をかぶっていた。
あの、路上でひとり弾き語りしてるバンド青年の前にたった一人でしゃがみこんで「私だけはあなたの魅力、わかってる」という顔してる女がかぶりがちな耳当てと一体化してるニット帽だ。
直感で思った。「あ、これ絶対ヤマの彼女だ」
「お前、来んなっつったろ」
「今日アルバイトの子来てるかと思って。来ちゃった」
私のほうを向き直った彼女は「ヤマの彼女です。この人、言い方きついけど、見放さないで一緒に働いてやってね」とほほ笑む。
ぴょこっ! っと音がしそうなかわいい動作で差し出された箱が菓子折りらしいと気づくのにちょっと時間がかかった。
ヤマはバツが悪そうにポリポリと頬をかいている。
私が出勤4回目で初めて出した飲み物は、店長の彼女へのオレンジジュースだった。
もう何もかもが「ベタ」すぎて、自分が妄想の世界に迷い込んだんじゃないか、気が狂ったんじゃないかと思わずにはいられない。
家に帰って開けてみると、菓子折りはかわいらしいマカロンだった。
あるのか、こんなベタなことが。
ヤバそうなバンドマンの彼氏に世話焼きでかわいい彼女という組み合わせ、こんなベタにくるのか。

客が来なかったのはその最初の頃までだった。
徐々に周囲に「最近できたのは焼き鳥屋らしい」と広まったのか客がぽつぽつ来るようになった。
私はやっとこさ給仕という仕事を与えられ、忙しく食器洗いする大変さも味わうことができた。
ヤマは相変わらず仕事のイロハを教えずにまず戦地に飛び込ませてから「なんでそんなのもわかんねェんだよ。こうだよ、こう」と私の肩にアザができるほど殴ったが(従業員を殴るのはどうかと思うのですが、被虐待児というのはこういう時こういうもんなのだと納得してしまうのだ!)まぁ給料はもらえるので、我慢していた。
最低賃金で働くバイト初経験に飲食バイトのマニュアルを自主作成するほどの情熱や知識はないのだ。
そんな折だ、事件が起きたのは。
「気にくわねぇなら、二度と来てもらわなくても構わねェんで」
ヤマがほろ酔いの客にビッ! と新品の串を突き付けた。
せっかく来た客を追い返してしまったのだ。
理由はマジで大したことがないので、世間知らずの私も頭の上にハテナが浮かびすぎて脳が破裂して大気圏まで脳漿が噴き上がった。
曰く、ヨキジになる以前の赤提灯の常連だったその客が「前の店はボトルキープしてくれたけど、兄ちゃんとこはしてくんねぇのかい。テレビも、前の店はおいてたけどおかねぇのかい」と何気なく言ったのが癇に障ったのだと。
それで追い返すか? ふつう?
あんまりな理由だったので、思わず「そんな理由で帰らせたんですか?」と言ってしまった。
その時のヤマの目と言ったらなかった。
ポカンとした私を睨んで「俺ァ、わかる奴だけくりゃいいと思ってんだ。わかんねェ客は客じゃねぇ」と言う。
私は黙ってしまった。気を悪くして帰った客の飲み残したビールを捨てながら、コダワリの店長ってめんどくせぇな……とばかり思っていたことを思い出す。
思えばその時すでにヤマの意味不明さと私が合わないのはわかっていた。

働き始めて二週間ほど経った。
店にはあいかわらず看板がない。しかし、暖簾がついた。
小さく端っこに「ヨキジ」と店名とキジトラ猫の絵が入った赤い暖簾だ。
店名のヨキジというのはてっきり鳥のキジかと思っていたが、猫のことだったらしい。
ヤマは多くを語らないので推理のように店の情報を埋めていかねばならなかった。
私が店についてふつう最初に聞いたら教えてもらえるようなこと(お通しはタダなのかとか予約は受け付けているのかとか)を都度問題が起こってからやっと聞かされ知ることができるようになっている間に、店に取材が入った。
こだわり店長の焼き鳥はロック仲間の伝手をたどって雑誌で紹介されることになったらしい。
店にはますます客が来るようになるのではないかと予想された。
私も今までのように質問しても教えてくれないヤマに負けてゆっくり自分で考えている暇がなくなってきた。ヤマにガンガン質問をした。
ヤマも今日のおすすめの一品をメニューに書くようになり、私はそれをおしぼり渡しのときに紹介することになったのだが、「これどんな料理なんですか」と聞いた私に対して「テメェで金払って食って確かめな」と言われたのは今もって納得いかない。
というかほかのメニューも正規料金で自腹で食って味覚えて客に紹介しろと言われてたの今も納得いかねぇ。
金がないって言ってんだろ!!!!!!!!!!!!!!!!!
このバイトのあと飲食はほとほと懲りたので、他もこれが当たり前なのかは知る由もない。

われわれが出会ってそろそろひと月。
いろいろな無駄話をした。(客が来ないので暇なのだ)
基本的にヤマがロック仲間としたヤンチャ武勇伝だったが、法に触れるものもあるのでここにおいては割愛する。特定されたらヤマ捕まっちゃうからな。
私はヤマの武勇伝が嫌いだった。
なんでカツアゲまがいのガリ勉狩りや未成年飲酒の話(割愛したのはこれよりもっとひどい部類に入る)を延々語られ「テメェは、そういう冒険が足んねぇのさ。だからバイトの一個も受かんねェんだ」とか言われなアカンのじゃと毎日思っていた。
でも、私はまだ見ぬ給料日というのに強い執着があった。
地方の最低賃金である。週に3回のバイトである。大した額にはならない。
しかし、初めて受かったバイト。初めての給料。
ここで辞めるわけにはいかなかった。石の上にも三年! と思ってひたすら相槌を打った。
彼女からもらったマカロン(これも生まれて初めて食べるものだった。中身の入ってない最中だと思った)を食べていたのも私の髪を引っ張る一因だった。

ヤマはよくよく私の肩を殴った。
焼き鳥串の渡し間違えた時、生ビールをビールサーバーから注ぐのに失敗した時。
土鍋をうっかり割った時のパンチはかる~くスキンシップとかそういうのを超えていた。
よくアザを作るので、私は女の子なんですけど……とムカムカと怒りがわいていた。
それに加えて我慢ならないのが、ヤマの口の悪さ。
ヤマは私の名前をあまり呼ばなかった。覚えていたのかも怪しい。履歴書見てないから。
基本的に「お前」。次いで「バカ」、それに「ブス」が続く。
なんなんだこの男は、とさすがに思った。
雇用者とか関係なく、ふつうまだ会ってひと月も経たない赤の他人を罵倒で呼ぶか?
あとヤマの仲間も口が悪いので、飲みに来たとき私のことを「オッパイ」と呼ぶのがふつうにセクハラだろと内心イライラしていた。
店員に「オッパイちゃんさぁ、オッパイ揉むのはサービスに入んねぇの?」と聞く男はね、何やってもだめ! バンド解散しちまえ!
「なァ、お前よぉ。近所のババアにあいさつ、すっか?」
「しますよ。ゴミ出しの時とか顔合わせますから」
「バカだな。お前ァだからバカなんだ。そういうのが死ぬタイプなんだよ。近所づきあいなんてするバカが死ぬんだ」
「ヤマさんはあいさつもできないんですか」
「誰にでもへーこらすんのはプライドのねェ奴がやるこった」
「……あいさつと媚び売ってるのは違いますけどね。違いわかんないんですか? 常識ないですよね」
「あ? んだとコラ」
「いーえ! 別に! ヤマさんがそうなさりたいならそうなさったらいいんじゃないですか!」
クビになる前日のこの会話はほとんど喧嘩だった。
私の声は甲高く、コロ助に似ている。
ヤマの声はキムタクをめちゃくちゃ気だるげにしてそこにペースト状にしたコナンのアカイシュウイチを混ぜて森進一を足したような感じ。
その二人が語気を強めて言い合っているので、店の外にまで面白声オーラが出てたのかその日は客がひとりもこなかった。

とはいえ、クビになったというか辞めてやったのはそういうくだらない喧嘩が理由ではない。
喧嘩、些細な会話の積み重ねもあるにはあるのだが、決定的な理由がある。
給料だ。
待ちに待った給料日。
個人経営のちいさな居酒屋では店長から給料袋でもらうのだと私は初めて知った。
「おら、今月の」
帰り際、どうでもよさそうにヤマから手渡された封筒が私には輝いて見えた。
ウキウキしながら家に帰り、さっそく給料袋から汗と涙と青アザの結晶を取り出す。
時給××円、週に3回だから……。
計算して出た金額は思いのほかに大きく感じる。
もう一度初任給をかみしめようと、一枚二枚とお札を数える。
数えるのだが、そのうちにどんどん私の首が斜めになっていく。
「……合わないな」
合わなかった。どう数えても8000円は足りない。
何度も計算したが、実際渡された紙幣より給料は多いはずなのだ。
恐る恐るヤマに電話をかける。
「あの、給料が計算額より少ないんですけど……?」
電話の向こうのヤマは「ああ」とあのシニカルな笑みを言葉の端ににじませていた。
「天引きしといた」

私の給料は天引きされていた。
全く知らなかった。
ヤマが「何回失敗してもいいから客いねェ時に生ビール練習しとけ」と唯一指示してくれた練習が普通に一杯失敗ごとに正規料金で給料から引かれていたことを。
不慮の事故で割れた土鍋を買い替えるお金が私の給料から引かれていたことを。
「ん。食え」と出されていたまかないが普通にお金とられていたことを。
私がヤマに罵倒され、客にオッパイと呼ばれ、時にアザができるほど殴られて得た給料はどう考えても説明義務がある事柄によって知らぬ間に引かれていた……!

電話口でヤマが「来月からよォ、俺のオンナが手伝いに来っから、お前のシフト減らすか、来ねぇことにするか悩んでんだけどよォ」とモッタリした声で問いかけてきて我に返った。
私は「もう辞めます!!!」と言って電話を切った。
それで、店に置いてたサンダルも引き取りに行かずにそれっきり連絡を取っていない。

私の初めてのバイトはほとんどハウルのセリフに集約される。
「面白そうな人だなぁと思って僕から近づいたんだ。それで、逃げ出した。恐ろしい人だった……」
最初からどう見てもヤバい店長だと思ってたのだ。
途中もずっとヤバい店長だと思い続けていた。
なのにひと月働いてしまった。完全にひと月無駄にしたと思った。
無駄に時間を使い、無駄に厳しい環境に身を置き、しないでもいい苦労をした。
あと肩に青アザもできたので寝返り打つたび痛い。
なのに給料から8000円引かれてる。薄給なので8000円と言ったらかなり大きい。

最初は面白ヤバい店長について面白く何か書こうと思ったら、書いてるうちにイライラしてきてふつうに愚痴になってしまったことをお詫びしたい。
しかし、みなさん、この店は現実にあるのだ。
さすがに店長の名前や店名は変えたにしても、今もふつうに営業していて食べログでも結構いい点数稼いでる。(むかつく記憶に邪魔されて書くのを忘れたが、料理は確かにおいしいのだ)
これからアルバイトというか仕事を始める人は、お店はよく選ぼう。
・店長に入れ墨が入ってる
・すぐ殴る
・口が悪い
・仕事を教えてくれない
・給料をなんの説明もなくいろいろ理由をつけて天引きしてくる
これらに当てはまるお店は絶対にやめよう!
たとえ何十件面接に落ちても、店長の彼女がマカロンくれても!
きっともっといいところがある。もっとマシなところがある。
「あっ、ヤバいだろうな」と感じ取ったら、その勘を信じるべきなのだ。
石の上にも三年。ありゃ嘘だ。


ちなみに、私はその後個人経営にも飲食にもほとほと懲りて、別のバイトを始めた。
無面接のイベント派遣スタッフだ。
高時給で仕事内容も行く現場ごとに変わるのでマニュアルを覚える必要も継続する人付き合いもない。
このアルバイトは大学を卒業するまで続けた。
携帯料金を払うには十分足りたし、貯金もできた。
ヤマのところでマジで「買ってした苦労」がクソの役にも立たない職場だった。

Posted at 17:20 | 小話 | COM(0) |
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